ドラマ・恋愛映画

『ピアノ・レッスン』の感想と紹介・ネタバレあり

更新日:

ピアノ・レッスン Blu-ray HDリマスター版

監督:ジェーン・カンピオン
脚本:ジェーン・カンピオン
出演者:ホリー・ハンター、ハーヴェイ・カイテル
配給:ミラマックス
日本公開:1994年

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ネタバレあり

簡単なあらすじ

口がきけない女性エイダの物語。

スコットランドに在住していたエイダは、結婚相手に合うために娘のフローラと愛用のピアノを引き連れてニュージーランドへ旅立つ。

無事ニュージーランドに到着したエイダたちであったが、新しい夫のスチュワートは、エイダの心とも言えるピアノを浜辺に置き去りにする。

ピアノを引くことができず意気消沈するエイダは、ある日ベインズという男のピアノレッスンをすることになるのだった…。

『ピアノ・レッスン』とは、ジェーン・カンピオン監督の作品であり第46回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。そして、アカデミー賞でも三部門を受賞した映画です

どんな作品かを一言で表すと「繊細で美しい映像と音楽の中で、人間の複雑さを描いた映画」です。人間の心は、必ずしも言葉で表すものではないと思わされる作品でした。

ピアノレッスンが公開された年には、スピルバーグ監督の傑作『シンドラーのリスト』も公開されています。とてつもない映画が連続で公開される”怪物みたいな年”があるんですよね…。私にとって去年はそんな”怪物みたいな年”でした。

物語ついて

『ピアノ・レッスン』は、エイダの心がピアノから開放されるまでの物語なのかもしれません。

彼女を語る上で欠かせないのがピアノです。ピアノはエイダの心を代弁する道具であり、彼女自身と言っても過言ではありません。

そんなエイダを理解したのがベインズ。理解しなかったのがスチュワートです

スチュワートはエイダを迎えに海岸に向かう際、鏡を見て身なりを整えたり、印象を良くしようと頑張っていましたが、出会った初日から最悪の行動をとってしまいます。エイダ自身とも言えるピアノを、置き去りにしてしまうのです。

この時点で私は「あ~あ、やっちゃった…」と思っていました。

スチュワートはこんな感じで、終始エイダを理解しなかったのです。ピアノが彼女にとってどれだけ重要であるかを理解していれば、時間はかかっても愛情のある家庭を築けていたかもしれません。時が解決してくれると思ったのがスチュワートの誤りです。相手にとって何が重要かを理解しようとしなければ、愛情など貰えるはずがありません。

スチュワートは作中で最も普通の人だと思います(エイダに対する仕打ちにはドン引きしましたが…)。エイダの娘であるフローラは序盤「新しいお父さんとは口も聞かない」と言っていたにも関わらず、終盤ではそれなりにスチュワートを信用しています。たぶんフローラにとっては、普通の父親だったのでしょう

スチュワートに対してベインズは、ピアノがどれだけ重要な物なのかを理解していました。だからこそ、ピアノを人質のようにしてエイダに近づけたのです。ベインズはエイダと接するように、ピアノのことも大切にしていました。

きちんと調律したり、全裸で磨いてみたり。彼のアプローチは変態的でワイルドですが、ピアノに対しても、エイダに対しても愛情を捧げていたことにエイダは惹かれたのです。先住民にも馴染んでいたベインズは元々、他人を理解するという素質があったのでしょう

そんなこんなでベインズと不倫関係になったエイダは、指を切り落とされてしまうという彼女にとって最大の仕打ちを受けることになります。それはピアノを引けなくなってしまったということ。言葉と心を奪われたのと同義です。

エイダはピアノと共に海に沈むという手段で自殺を試みます。静寂な海の中で彼女は何を感じたのでしょうか。最後は生きることを選んだエイダですが、自殺を試みる以前までのエイダは死んだのだと思います。

必死に泳ぎ、海面に顔を出したときのエイダは以前とは別人のような表情になっていました。この時エイダの心は、ピアノから体に住処を変えたのではないでしょうか。海に沈んだピアノは、エイダの抜け殻であり古巣なのだと私は思っています。

演出と演技について

構図がきれい映画だなあ…と思いました。ヴィクトリア朝の衣装とニュージーランドの生い茂る草木が印象的で、女性監督ならではの繊細さと美しさを感じます

浜辺にぱつんと置いて行かれたピアノが、エイダの心境とピアノの重要性を物語っており素晴らしい。マイケル・ナイマンが作曲した「楽しみを希う心」も何度も聞いてしまうほど好きです。

怖さの演出も上手くできていて、スチュワートが斧を持ったまま歩き出すシーンでは「おい!やめろやめろ!」と止めに入りたくなってしまうほどの鬼気迫る雰囲気がありました。

役者陣の演技も一級品です

若干11歳でアカデミー助演女優賞を獲得したアンナ・パキンは、生意気で無邪気な少女を見事に演じていますし、終盤には大人顔負けの号泣シーン。

主演のホリー・ハンターはセリフがほとんどないにも関わらず、繊細な演技でアカデミー主演女優賞を獲得。エイダが指を切り落とされたあとの表情が忘れられません。あの何とも言えない表情。思い出すだけで心が痛くなります。

ベインズ役のハーヴェイ・カイテルのことは、『レザボア・ドッグス』と『スモーク』の渋い演技を観て好きになったのですが、本作でも安定の上手さ。変態なのに格好いい男が板に付いています(もちろん褒め言葉)。

まとめ

『ピアノ・レッスン』は、美しい映像と音楽、そして他人を理解し、尊重することの重要性を教えてくれる素晴らしい映画です。文句無しの傑作だと思っているので、ぜひ鑑賞してみてください。

ちなみに、私も昔ピアノを習っていましたが、左右の手が同じ動きをしてしまうことにイライラして早々にやめました…。

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