戦争・歴史映画

『サウルの息子』の感想と紹介

更新日:

サウルの息子(字幕版)

監督:ネメシュ・ラースロー
脚本:ネメシュ・ラースロー
出演:ルーリグ・ゲーザ、他
配給:ファインフィルムズ
日本公開:2016年

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ネタバレあり

簡単なあらすじ

第二次世界大戦中の強制収容所でゾンダーコマンドの一員として死体処理に従事するユダヤ系ハンガリー人のサウルは、少年の遺体を自分の息子だと思い込む。ユダヤ教に則った埋葬を施すため、ラビ(宗教的指導者)を探すのだった。

第68回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、第88回アカデミー賞では外国語映画賞を受賞した、ネメシュ・ラースロー監督の『サウルの息子』を紹介します。

私はこの作品を見たとき衝撃を受けました。強制収容所を舞台にした映画は他にもありますが、本当に恐ろしいと思った映画は、この作品が初めてです。この映画を見るまで、第二次世界大戦中の強制収容所が、どれだけ恐ろしい場所だったのかを、私は知ったつもりになっていたのかもしれません。

本作は画期的な撮影手法を取り入れています。被写界深度の浅い映像40mmレンズと1.375:1のアカデミー比を使ったことによる狭い視野で、緊迫感の在る映像を生み出しています。音響も生々しく設計されており、主人公サウルが耳にしている音を、そのまま聞いているかのような感覚になりました。

こういったネメシュ・ラースロー監督の演出で、本作は恐ろしく、そして緊迫した映画になっています。では、『サウルの息子』のストーリーについて考えていきたいと思います。

ゾンダーコマンドとは

第二次世界大戦中、ドイツは強制収容所内の囚人を労務部隊にして、ガス室などで殺されたユダヤ人の死体処理をさせていたそうです。(彼らはユダヤ人の殺傷には直接関わっていません)

その労働部隊がゾンダーコマンドです。(ドイツ軍の特殊部隊もゾンダーコマンドと呼びますが、性質が異なります)

本作の主人公であるサウルも囚人でありゾンダーコマンドです。彼らは他の囚人よりも比較的ましだったそうですが、死体を処理する日々や、いつ殺されるかも分からない恐怖は、間違いなく精神も体も蝕んだでしょう。

現代で普通に生活している私には、その気持が分かるとは言えませんが、少なくとも、人間が人間らしく生活していた、とは言えない状況だったことは分かります。

サウルの心境

過酷な仕事に従事していたサウルですが、ある日、ガス室送りになった少年の遺体を見つけます。その遺体をサウルは自分の息子だと思いこんでしまいます。この少年の遺体が本当に『サウルの息子』だったかどうかは、明らかにされていませんが、私は違うのではないかと思います。

いつ死ぬのかも分からない状況で日々、過酷な仕事に従事し、地獄のような環境で生きるというのは、死ぬよりも辛いことかもしれません。サウルは生きる希望を少年の遺体に見出したのではないか、と思うのです。遺体を息子だと思い込むことで、埋葬するという生きる目標が生まれます。

そして生きる意味ができたサウルは、遺体を埋葬するために悪戦苦闘するのですが、終盤、脱獄を図ったゾンダーコマンド達の混乱の中で、少年の遺体を手放してしまいます。

意気消沈したサウルは森の納屋に逃げ込み、納屋を覗き込む一人の少年に微笑むのですが、この少年のおかげでサウルは、生きる意味を探す必要がなくなったのではないかと思いました。

「自分にこの先何が起きようと、この少年は生きていく」とサウルは思い、それがあの微笑みに現れたのではないかと私は思ったのです。しかし、映画評論家の町山智浩氏は、もっと広い視野でこの映画を見ていました。

町山氏はユダヤ教の教えとサウルの心境を関連付け、見事にこの映画について解説していました。私はその解説を聞いて、やはり多くの作品に接している方の解説は分かりやすく、そして理にかなっていると思いました。興味が在る方は、動画が上がっていると思うので聞いてみてください。

まとめ

ネメシュ・ラースロー監督の初めて手掛けた長編が『サウルの息子』だったそうですが、初っ端から、とんでもない映画を作ってきました。今後、この監督から目が離せません

ネメシュ・ラースロー監督の卓越した演出は映画界にも衝撃を与えた思います。『サウルの息子』は、第二次世界大戦の中で生まれた悲惨さを学ぶためにも、ぜひ見てもらいたい作品です。皆さんも自分の目で確かめて、この作品について考えてみてください。

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